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現代美術製作所
入り口の扉を閉めつつ、痛々しい柵に誘導されて、空間に導かれる。
壁にかけられた黒い布には社会運動の現場の記録が転写され、その下のトラメガからは「声」がより象徴的に響きだされている。鉄筋の先端を鋭角に削りあげた侵入を防止する攻撃的な柵はすいぶんと低い位置に設置され、社会の中での防御するべきものを問いただすと同時に、防御の意味自体も問う。

青いプラスチックの板は「青空」のメタファーである。と言い切りながら矩形に切り取られた青(空)はビルの隙間から見える空景(GAZE)である、と思い直してみる。
そこへ藤井はさっそく飛び込み、青空を体当たりで割る。
砕けた青い破片は散らばり、一つ一つに金網や白い壁や天井を写しこんでいる。
青空はソーラーシステムで働く小さなデジタルビデオカメラにより監視されている状態で、その下には「NO ART」そして「NO TOKYO」と続くのか。
その言い回しは、SONYのおかげで、アートがなければ東京じゃない。と自動翻訳が頭の中でなされるが、気分的には、「アート いらない」「東京 いらない」という響きに変わる可能性もある。

奥の部屋で上映されている映像作品をまっすぐに鑑賞し続けれらる人がどれほどいるのだろうか?
私はおりしも、42日間の勾留を経て一時的に保釈された身で藤井 光の展示を見たわけだが、身につまされる感覚が邪魔をして素直には映像から流れてくる抗う声に同調するのは難しかった。
これはまた、面倒なことではる。
だがしかし、藤井がとる態度はこの世界の力のありようを問うものであり、その問いを突きつけてゆくことの出来る力が藤井の映像のスタンスにはある。


それにしても、空間の中でこれほど青と黒が印象的に配置されているのを経験するのも珍しい。
ニブロールの矢内原くんが徹底的に黒と青でファッションショーを競技場で展開したのを見たとき以来だ。
それからというもの、青と黒が近づくと矢内原くんのことを思い出すようになってしまったが、今後はこの空間の光景を先に思い出して行くのだろう。

現代美術製作所 藤井 光 「芸術 起源 デモクラシー」  2009年9月19日(土)~10月4日(日)

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ずいぶんと色っぽい街である。
向島へ正面切って出かける心の準備はいつも出来はしないが、現代美術製作所があるから、向島へ降り立つことができる。この空間の成り立ちから語り始めると、いくつもの日の出を仰ぎ見なければならなくなるので、さくりと言うと、大岩くんが、床に数字の並びを間違えつつも線路を描いてから、ずうっと、この場を気にしていた。
と、同時に、あらゆる場に対する何らかの欲求がその頃から個人的には急激に薄れていったのも事実だ。

その薄れている間、それでも生活をしてゆかなくてはならないのだから、地下の雀荘にいた。
15卓ある高田馬場の、いつも夏場になると空調が壊れる店ではそれでも打ちに来る客は多く、それぞれの緑色の卓の上で「場」を回していた。賭け事にも謀(はかりごと)にも、ほとほと興味を失っていた私は、日々の回転してゆく、見えないルールを肌で感じているだけで、心配して訪ねてくる旧知の知人との会話も、いつも的を得ないものになっていた。

現代美術製作所の扉をおそるおそる開けるのはいつものことで、なぜなら、かつて、この場は「絶縁体をつくってました」という工場跡地なのだから、先鋭的な現代美術を鑑賞するには、意味が多重に交差して、いつまでたっても頭の中では交差する意味がまとまりきらないで作品群の先鋭的なエッセンスがいつまでも記憶の中に残る。
ディレクターである曽我さんの、事象を深読みしてゆく力と展示という現象を包容してゆく力のバランスに助けられているアーティストも数多いと思う。彼のアンテナの感度の高さは、いずれ多くの人が明言するはずだし、現代美術製作所じたいが牽引役になっている「芸術上の事件」も美しく咲きほころんでいる。
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by docore | 2009-09-21 03:45 | 月を運ぶ
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