オスカール 大岩
西新井アトリエと題された一枚の版画を持っている。 1994年のプリントだ。 オスカールの西新井のアトリエの所在を、この版画を手に入れた10数年後の彼のMOTでの展示で知った。それまでは会田から伝え聞く、「何故、日本ではアーティストが六畳一間で制作を余儀なくされなくてはならないのか!?と怒るんだよね、彼、 彼は堂々とそういうことが言える・・・」というような話とか、本人からは、「僕のモラルは生まれた環境に影響を受けているかもしれない・・・」と神妙に語る彼の眼の奥が語るものを、うっすらと読み取る程度で、MOTでのビデオ授業のような映像も、あまり真剣に見る気がしなかったし、向島で手に入れた、この版画も、箱に入れてすいぶんと長い間、仕舞ったままで、どこの壁に飾る、というわけでもなかった。 「うまれたところから影響を受ける」 (・・・書きかけ ) その彼の新作がすでに、男木島での展示中に燃えてしまったという。 燃える絵画。 絵画は今回、灰になったのかもしれないが、それが絵画の終焉を意味するわけではなく、何か祝祭的な、もしくは儀式的なものを感じている。 鉄工所の壁にしつらえた、島の大事な記憶の風景と、海にたいする画家のイメージを床に投影、想像したものが、燃えてなくなる。 海が燃えて・・・ それらは、海底油田の発掘から絡まる昨今のアジア東部の諸問題を端的に想起させるには充分な事件であったか? 絵画が燃えて・・・ 全焼ということばから、すべて灰に帰したのだろうと思うけれど、どうも何か大岩のエッセンスがその現場に漂っているようで、それを感じに行くだけでも、瀬戸内国際の価値はあると思う。 そうでなければ、瀬戸内の島が連なり、雲がうまれ、渦を巻き続ける、風景を味わいにゆくだけで、別段、現代美術を経験しに、瀬戸内まで繰り出す必要など何も無いのだ。
by docore
| 2010-09-30 02:29
| 月を運ぶ
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